教科書の表を見ながら、ドイツ語の(ドイツ語だけでもないが…)形容詞はどうして語尾変化するのだろう?と考えたことはありませんか?

 ドイツ語の名詞にはつねに性と格があります。これがわからないと、ドイツ語の文が正確に読めません。
 しかし、名詞だけ見てその性や格を見抜くのも、なかなか難しいものです。
 例えば Stein は? Fenster は?

…でも…

 名詞の前にある冠詞( der や ein )は、性と格によってしっかり形が変わります。
 冠詞の形を見れば、うしろにある名詞の性や格もわかるのです。
 例えば der Stein と書けば男性名詞の1格、 den Stein と書けば男性名詞の4格、 das Fenster と書けば中性名詞の1格か4格、という風に…

 つまり、冠詞の変化には、うしろにある名詞の性や格をはっきりさせるという役割があるのです。

…ということは…

 形容詞にも、うしろにある名詞の性や格をはっきりさせるという役割があって、その語尾変化も冠詞の変化に近いのではないでしょうか?


 そこでためしに、定冠詞 der の性・格変化を書き出してみましょう。
※不定冠詞 ein でもできないことはありませんが…自分でやりましょう。
男性名詞
女性名詞
中性名詞
複数
1格
der
die
das
die
2格
des
der
des
der
3格
dem
der
dem
den
4格
den
die
das
die

 上の表から形容詞の語尾の見当をつけてみると、まあ次のような感じになるでしょう。
男性名詞
女性名詞
中性名詞
複数
1格
-er
-e
-es
-e
2格
-es
-er
-es
-er
3格
-em
-er
-em
-en
4格
-en
-e
-es
-e

 実はこれだけで、正しい形容詞の語尾変化にかなり近いのです。
 ためしに、形容詞 gut 「よい」と男性名詞 der Mann 「男性」、女性名詞 die Frau 「女性」、中性名詞 das Buch 「本」、そして複数形の名詞 die Leute 「人々」を使った例を書いてみましょう。
※ Leute はもともと複数形。もちろん Mann の複数形 Männer や Frau の複数形 Frauen や Buch の複数形 Bücher を使ってもかまいません。

男性名詞
女性名詞
中性名詞
複数
1格
guter Mann
gute Frau
gutes Buch
gute Leute
2格
gutes Mannes*
guter Frau
gutes Buches*
guter Leute
3格
gutem Mann
guter Frau
gutem Buch
guten Leuten**
4格
guten Mann
gute Frau
gutes Buch
gute Leute

 文字が赤くなっているのは何でしょう?実はその部分は正しい語尾変化ではないのです。
 正しい変化は次の@です。よく見比べて下さい。


@冠詞もなにもないとき
男性名詞
女性名詞
中性名詞
複数
1格
guter Mann
gute Frau
gutes Buch
gute Leute
2格
guten Mannes*
guter Frau
guten Buches*
guter Leute
3格
gutem Mann
guter Frau
gutem Buch
guten Leuten**
4格
guten Mann
gute Frau
gutes Buch
gute Leute

 文字が青くなっているのは男性名詞と中性名詞の2格です。
 この2ヶ所だけ冠詞の語尾とは一致しないので、注意して下さい。
 …もっとも、初級でこの形を使うことはまずないので、気にすることはありません。

 次に、不定冠詞( ein )が形容詞の前にある場合をAで見てみましょう。


A不定冠詞( ein )があるとき または人称代名詞( mein, dein, sein, Ihr, ..... )があるとき
※複数形はあとで…Cで見ます。
男性名詞
女性名詞
中性名詞
1格
ein guter Mann
eine gute Frau
ein gutes Buch
2格
eines guten Mannes*
einer guten Frau
eines guten Buches*
3格
einem guten Mann
einer guten Frau
einem guten Buch
4格
einen guten Mann
eine gute Frau
ein gutes Buch

 2格と3格がすべて -en になっています。
 なぜでしょう?
 これは不定冠詞 ein の変化に関係があります。例えば eines は男性&中性の2格、einem は男性&中性の3格、einer は女性の2格&3格です。つまり不定冠詞そのものが、すでに性や格を判別しやすい形になっているのです。
 ということは、形容詞が -es だの -er だのと強い変化をする必要はないから、すべて -en でそろえられているというわけ。

 それじゃ… das とか der とかもっとはっきり変化するものがあると、形容詞の変化はもっと弱くなるのでは?
…と思った人はスルドイ!!その通りです。次のBを見て下さい。


B定冠詞( der )があるとき または指示代名詞( dieser, jener, ..... )があるとき
男性名詞
女性名詞
中性名詞
1格
der gute Mann
die gute Frau
das gute Buch
2格
des guten Mannes*
der guten Frau
des guten Buches*
3格
dem guten Mann
der guten Frau
dem guten Buch
4格
den guten Mann
die gute Frau
das gute Buch

 不定冠詞 ein の時は、男性名詞1格も中性名詞1格&4格もすべて ein でしたが、定冠詞の時は der 、das 、das です。
 そのうしろにある形容詞の語尾は、もはや単なる -e
 しかも、女性名詞1格&4格はもともと -e ですから、単数形の1格&4格が(男性名詞4格をのぞけば)すべて -e ということになるのです。
 そして、それ以外はみんな -en !なんとわかりやすいこと…


C
 さて、AとBでは複数形の場合を省略しました。といっても、変化が難しいからではありません。
 あまりにも簡単だからです。
 複数形の不定冠詞( ein )はありませんが、かわりに同じような格変化をする人称代名詞( mein, dein, sein, Ihr, ..... )があったらどうなるでしょう?
 例えば mein「私の」を使うとこうなります。
複数
1格
meine guten Leute
2格
meiner guten Leute
3格
meinen guten Leuten**
4格
meine guten Leute

 また定冠詞がある場合は、次のようになります。

複数
1格
die guten Leute
2格
der guten Leute
3格
den guten Leuten**
4格
die guten Leute

 というわけでぜんぶ -en でした。



*  男性名詞と中性名詞の2格には -es か -s がつく。英語の 's みたいなものと考えて下さい。
** 複数3格には -en か -n がつく。最初のうちはあまり気にしないで下さい。